頭痛外来
Headache
頭痛について
日本人の4人に1人は慢性的な頭痛持ちだと言われています。
なかでも片頭痛は、家事や育児、仕事などの日常生活を損なう、社会的影響も非常に強い疾患です。それにもかかわらず、片頭痛患者さんの医療機関への受診率は低いのが現状です。日常生活に支障をきたしているにもかかわらず、片頭痛を病気と認識していないことが要因と思われます。大半の患者さんは「たかが頭痛くらいで」と病院へ行くのをためらい、市販の頭痛薬で我慢しているのです。
当院では片頭痛をクオリティ・オブ・ライフ(QOL)に影響する疾患であるという認識のもと、頭痛外来を常設して、慢性頭痛の診断と治療が受けられる環境を整備しております。
頭痛外来においては、頭痛の正確な診断と服薬指導の他、日常生活における頭痛の予防や対処法についての指導をおこないます。患者さんひとりひとりに対して、ライフスタイルに合わせたテイラーメイドの治療を提供することが可能です。さらに片頭痛にまぎれてしまう可能性のある脳の病気の早期発見にもつとめています。
片頭痛は、薬の飲み方を誤ると慢性化や重症化する可能性があります。特に薬の過剰使用を続けると、薬剤乱用頭痛と呼ばれる慢性頭痛へ変貌してしまい、治療が難しくなる可能性があります。そうならないためにも薬の服用には注意する必要があります。
週1回以上頭痛発作がある、市販の消炎鎮痛薬が効きにくくなった、発作時に吐き気や嘔吐がある、生活に支障がある、以前に比べて頭痛が強くなった、などの症状がある場合は頭痛外来を受診してください。片頭痛は病院で治療を受けることができる「病気」であるという認識がなにより重要なのです。
頭痛外来の流れについて
2 医師診察
医師が問診や神経学的診察を行います。
3 MRI・CT検査
必要に応じてMRI検査、CT検査、首のレントゲン撮影などを実施します。
4 結果説明
診察および検査の結果により診断と治療方針について説明いたします。
5 指導
頭痛アドバイザーによる生活・食事指導、頭痛ダイアリーの説明 などを行います。
6 フォローアップ
頭痛ダイアリーを参考に診療効果を検証して、治療方針の確認や見なおしをします。
CGRP関連抗体製剤
CGRP-related monoclonal antibodies
片頭痛の急性期にはトリプタンや鎮痛薬を使用しますが、つらい頭痛発作が月に何度も起こる場合には予防療法を併用します。
また、頭痛の回数は少なくても日常生活に支障が出るほど痛みが強い場合、発作に対する不安感や恐怖感が強い場合、合併症や副作用のため急性期治療が行えない場合にも予防療法は勧められます。
片頭痛に特化した予防薬であるCGRP関連抗体製剤が2021年から使用可能になりました。
1ヶ月あるいは3ヶ月に1回皮下に注射するタイプの薬剤で、片頭痛日数が減るだけでなく、発作時の痛みも軽減して急性期治療薬を使う日数が減るという効果が期待できます。
また、重篤な副作用の報告が比較的少ないのも特徴です。日本頭痛学会、脳神経外科学会、日本神経学会など、認定専門医のいる頭痛に特化した施設でのみ受けられる治療です。CGRP関連抗体製剤による予防療法は気象関連片頭痛に対しても有効な治療法となる可能性があります。
日本では現在3種類のCGRP関連抗体製剤が使用可能です。
「ガルカネズマブ:(商品名)エムガルティ®️」「フレマネズマブ:(商品名)アジョビ」「エレヌマブ:(商品名)アイモビーグ」の3種類です。
当院でも同様に上記3種類が使用可能です。
今を見直す片頭痛予防、先を見据えた片頭痛予防
片頭痛により日常的に家庭、仕事、学校や社会活動が妨げられます。
職場では、集中力が低下し仕事の効率が悪くなる「プレゼンティズム」や、頭痛のために仕事を休んでしまう「アブセンティズム」の状態となります。さらに、頭痛がない「発作間欠期」においても、いつも朝から不快感、倦怠感、集中力低下、霧がかかる感じがして、日々の生活にさまざまな影響をきたします。
片頭痛発作時は三叉神経からCGRPという神経ペプチドが放出されます。
CGRP関連抗体薬は、CGRPの働きを抑え、発作が起こるのを抑える新しい注射薬です。頭痛回数軽減だけでなく、発作間欠期にも晴れ間が広がるクリスタル・クリア効果が期待され、当たり前の日常生活を変えてくれる可能性があります。
頭痛回数が月に15日未満の場合を反復性片頭痛、月に15日以上の場合を慢性片頭痛と呼びます。
また反復性片頭痛は月に8日未満の低頻度と月に8以上の高頻度とに分けられます。高頻度になると慢性片頭痛と同程度に社会生活や家庭生活に重大な支障をきたします。
低頻度反復性片頭痛は、頭痛頻度が多くなるほど高頻度反復性片頭痛や慢性片頭痛へ移行しやすくなります。つまり頭痛回数が少なくても、頭痛時のみに急性期治療薬で対処するだけでなく、頭痛回数の発生そのものを抑えていないと、将来的に頭痛が慢性化していく方向へ向かう危険性があります。
CGRP関連抗体薬は、現在の頭痛日数を減らすのみでなく、将来的な頭痛の慢性化を防ぐ可能性もあるのです。