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【Vol.163】子どもと思春期の頭痛(4)
Q)子どもの片頭痛の治療について教えてください
A)片頭痛の治療は生活指導や頭痛の誘因を避けるなどの「非薬物治療」が勧められます。日常的には、早寝・早起き・朝ご飯、正しい姿勢、適度な運動、電子メディアの制限などです。子どもの頭痛に対しては、安全性を考慮して鎮痛薬を使用しますが、鎮痛薬が効かない場合はトリプタン(片頭痛専用の薬)の使用を検討します。また、吐き気が強い場合は制吐薬の投与も考えられます。発作時間が短い場合はあえて薬を飲ませる必要はありませんが、頭痛を必要以上に我慢させるのはよくありません。学校などにも薬を持参させます。頭痛時に休息や睡眠をとらせるのも効果的なので、担任や保健室の先生に理解しておいてもらうことも大切です。片頭痛の発作の頻度が多かったり、学校などを休みがちな場合は、頭痛を起こりにくくしたり痛みの程度を軽くするための予防薬を使用します。
治療については「頭痛外来」ページ をご覧ください。
【Vol.162】子どもと思春期の頭痛(3)
Q)子どもの片頭痛の誘因について教えてください
A)子どもの片頭痛の誘因で最も多いのは睡眠不足です。塾通いが始まる小学校高学年の子どもは就寝時間が遅くなり、発作が増えることがあります。
光環境も片頭痛に影響を与えることがわかっています。ブルーライトは誘発因子となるので、テレビやスマホ等の制限で頭痛が改善することがあります。光を避けるため、教室の席を廊下側に移したところ、頭痛発作が減った例もあります。
空腹だと低血糖となり、脳の血管が拡張して片頭痛を誘発します。十分な朝食を摂ることが大切です。カフェインの過剰摂取は、それが中断または遅延されるとカフェイン禁断により片頭痛を誘発します。受験期のエナジードリンクの飲み過ぎは要注意です。また、チョコレート、チーズ、揚げ物、ヨーグルト等、食べ物が誘因となることもあります。
治療については「頭痛外来」ページ をご覧ください。
【Vol.161】子どもと思春期の頭痛(2)
Q)子どもの片頭痛について教えてください
A)片頭痛は子どもにもよくみられる頭痛で、早い子どもでは幼稚園くらいから頭痛発作が起こるようになります。「頭が痛い」と表現するとは限らず、“黙ってしまって何か変”、“いつもより食欲がない”、「だるい」という訴えも要注意です。身体が小さくても、大人の片頭痛と同様にひどい発作をきたします。子どもの片頭痛は、大人のそれと比べて発作が始まるのが非常に急で、持続時間も過半数が3時間以内と短いのが特徴です。また、大人と比べてズキンズキンといった拍動性や片側性がはっきりしないことが多いようです。さらに、嘔吐や下痢等の腹部症状が強く、国際頭痛分類でも子どもの自家中毒(周期性嘔吐症候群)や腹痛発作(腹部片頭痛)は片頭痛の一型に含まれます。なお、片頭痛は遺伝性が強く、母親が片頭痛持ちの場合が多く見られます。
脳と頭痛にまつわるユーチューブ動画を配信しておりますのでご視聴ください。
治療については「頭痛外来」ページ をご覧ください。
【Vol.160】子どもと思春期の頭痛(1)
Q)子どもはどのような頭痛で病院へ受診しますか?
A)小児科外来で多いのは、風邪などの感染症に伴う頭痛です。風邪などで発熱があれば頭痛があることに納得できますが、解熱後も頭痛が続く場合は副鼻腔炎などを合併している可能性もあります。発熱のない頭痛で受診する場合、最も多いのは片頭痛です。片頭痛は痛みが強く、嘔気や嘔吐を伴うことがあります。次に多いのは軽度の痛みがだらだら続く緊張型頭痛です。片頭痛と緊張型頭痛はどちらも原因疾患のない「一次性頭痛」です。
頭痛専門外来で最も多いのは片頭痛です。頭痛の頻度が増えた場合や、保健室へ行くようなひどい頭痛で、痛み止めが効かない場合に受診されます。また、小児科からの紹介で多いのは、治療が効きにくく、学校の欠席が続いている中高生の慢性連日性頭痛です。この場合は片頭痛に緊張型頭痛が加わり、突然強い頭痛が連日続きます。
治療については「頭痛外来」ページ をご覧ください。
【Vol.159】脳卒中・認知症予防のための脳ドック
Q)脳ドックとはどのようなものですか?
A)日本脳ドック学会には、2019年より「脳卒中・認知症予防のための医学会」というサブタイトルがつけられました。超高齢化社会になった現在、脳ドックに対する社会的要望は脳卒中予防だけでなく、認知症予防の比率が高まっているためです。今後は、まだ健常な時期から認知機能状態を正確に把握し、生活習慣病等のリスク管理を積極的に行う仕組みが脳ドックに求められています。脳ドック学会においては、無症状の小さな病変まで検出する高性能MRI機器の使用、専門医による画像読影、医師の直接対面での結果説明と指導、認知機能検査や頸動脈超音波検査を行うコース設定、が学会認定施設の基準となっています(県内4施設)。75歳未満の山口市国民健康保険の方は簡易脳ドックも利用出来ます(今年度は12月20日まで)。
脳ドックの詳細については「脳ドックのご案内」ページをご覧ください。
【Vol.158】新しい片頭痛治療(12)
Q)気象頭痛を持っていませんか?(7)
A)ウェザーニュースの発表では、今シーズンの台風発生数は、平年より3個多い29個前後となる予想です。また、勢力の強い台風が多くなる傾向があり、より警戒が必要です。
台風が片頭痛を誘発しやすいことはよく知られています。接近から通過までの気圧変動と頭痛発生についての研究では、標準大気圧1013hPaから6〜10hPaの初期の気圧低下時に片頭痛が発症しやすいという結果でした。つまり、台風が近づく直前が最も注意を要します。
しかし中には、北太平洋沖で台風が発生したとたん症状が出るという感度の高い人もいます。台風が発生すると、50Paほどのさらに小さな気圧のさざ波が3000km離れた日本でも発生します。この微気圧変動が耳の奥の内耳にある気圧センサーに作用して片頭痛を引き起こす可能性があるのです。
天気痛・気象頭痛の詳細については「天気痛 気象頭痛」ページをご覧ください。
【Vol.157】新しい片頭痛治療(11)
Q)気象頭痛を持っていませんか?(6)
A)昨年11月の日本頭痛学会総会で、「片頭痛を誘発する気象条件について」という演題で発表しました。発症の誘因となる気象因子としては天候、気圧、気温、湿度がよく知られています。当院の研究では、気圧の影響は片頭痛患者様全体の82%でみられました。降雨前で気圧が低下する時点が70%と最も高く、雨天で低気圧の続く時点が44%、天気が回復し、気圧上昇する時点が25%でした。初期の気圧低下が、最も片頭痛の発症に影響を与えるといえます。さらに、気圧変化で片頭痛を誘発する患者群は、めまいを伴う割合が高くみられ、内耳にある気圧センサーが過敏だと考えられます。
また、気温の影響も全体の76%と高く、気温上昇が62%、気温低下が40%でした。湿度の影響は湿潤が60%と高く、梅雨時期は要注意です。
天気痛・気象頭痛の詳細については「天気痛 気象頭痛」ページをご覧ください。
【Vol.156】新しい片頭痛治療(10)
Q)今を見直す片頭痛予防、先を見据えた片頭痛予防
A)頭痛回数が月に15日未満の場合を反復性片頭痛、月に15日以上の場合を慢性片頭痛と呼びます。また反復性片頭痛は月に8日未満の低頻度と月に8以上の高頻度とに分けられます。高頻度になると慢性片頭痛と同程度に社会生活や家庭生活に重大な支障をきたします。低頻度反復性片頭痛は、頭痛頻度が多くなるほど高頻度反復性片頭痛や慢性片頭痛へ移行しやすくなります。つまり頭痛回数が少なくても、頭痛時のみに急性期治療薬で対処するだけでなく、頭痛回数の発生そのものを抑えていないと、将来的に頭痛が慢性化していく方向へ向かう危険性があります。CGRP関連抗体薬は、片頭痛発生に直接関与するCGRPの働きを抑えて、現在の頭痛日数を減らすのみでなく、将来的な頭痛の慢性化を防ぐ可能性もあるのです。
【Vol.155】新しい片頭痛治療(9)
Q)今を見直す片頭痛予防、先を見据えた片頭痛予防
A)片頭痛により日常的に家庭、仕事、学校や社会活動が妨げられます。職場では、集中力が低下し仕事の効率が悪くなる「プレゼンティズム」や、頭痛のために仕事を休んでしまう「アブセンティズム」の状態となります。さらに、頭痛がない「発作間欠期」においても、いつも朝から不快感、倦怠感、集中力低下、霧がかかる感じがして、日々の生活にさまざまな影響をきたします。
片頭痛発作時は三叉神経からCGRPという神経ペプチドが放出されます。CGRP関連抗体薬は、CGRPの働きを抑え、発作が起こるのを抑える新しい注射薬です。頭痛回数軽減だけでなく、発作間欠期にも晴れ間が広がるクリスタル・クリア効果が期待され、当たり前の日常生活を変えてくれる可能性があります。
【Vol.154】新しい片頭痛治療(8)
Q)片頭痛ヨガはどのようなものですか?
A)近年片頭痛治療におけるヨガの有効性を示した複数の研究報告がなされています。ヨガは呼吸をコントロールすることで、体内のエネルギーの流れや質を変えることができ、息を吸い込むと交感神経、吐き出すと副交感神経の活動を増大させます。交感神経は体を活動状態、副交感神経は体を休息状態にしようとします。ヨガは自律神経のバランスを整え、後頸部の筋群をほぐすことで脳へ良い刺激が送られ、片頭痛を予防する可能性があります。
筆者は、ヨガインストラクター沖祥子先生の監修の元、初心者でも簡単に、5分以内の短時間で、狭いスペースで座ったまま、どんな服装でもできる、をコンセプトにした片頭痛発作予防に特化したオリジナルプログラムを考案しました。スマートフォンで2次元コードを読み取り、筆者が実演して指導を行う動画をご視聴ください。
片頭痛ヨガの詳細については「片頭痛ヨガ」ページをご覧ください。