Phone 083-920-1001

 診療時間 

午前 9:00~12:30
午後 2:30~6:00

 休診  日曜・祝日・木曜午後・土曜午後
※診療の予約は不要です(MRIの予約は可)
※必要に応じて当日のMRI/CT検査も行います

午前 9:00~12:30
午後 2:30~6:00

 休診  日曜・祝日・木曜午後・土曜午後
※診療の予約は不要です(MRIの予約は可)
※必要に応じて当日のMRI/CT検査も行います

Zutsu Café

頭痛カフェ

Vol.1

最近、TVで柳葉敏郎さんや妻夫木聡さんが出演するロト6のCMでバックに流れている曲をご存じですか。実はこれはモーツァルトのレクイエムという作品です。レクイエムは「死者のためのミサ」の通称で日本では鎮魂歌と呼ばれています。

モーツァルトのレクイエムはヴェルディ、フォーレの作品とともに3大レクイエムの一つに数えられます。

全14曲で構成され、中でも第3曲目の「ディレス・イレ(怒りの日)」が有名です。ディレス・イレとはキリスト教の終末思想の一つで、世界の終末の日に過去のすべての人間を地上に復活させ、天国に行けるか地獄に落とされるか、その生前の行いに審判が下される日を指します。

明るい作品が多いモーツァルトの中でこのレクイエムは暗い重苦しい曲の部類に入ります。

モーツァルトは頭痛持ちだったと云われており、死の1年前頃から頭痛と歯痛に悩まされ始めたといいます。1791年7月に灰色の服をまとった謎の使者から依頼を受けて、激しい頭痛や吐き気にさいなまれながらも死の4時間前までレクイエムを書き続け、12月5日に35歳の若さでなくなりました。

レクイエムは、未完に終わりましたが、弟子によって完成され、天上の響きともいえる美しい旋律で知られています。

モーツァルトのイメージ


Vol.2

頭痛が世界に大きな影響を与えることがあります。

キリスト教の「最高の伝道者」として知られる聖パウロは、熱心なユダヤ教の家庭に生まれ育ったために、当初はキリスト教を迫害しました。パウロは「悪魔の使い」と呼んだ繰り返す痛みに苦しみます。ある日突然、閃光の中で「パウロ、あなたはなぜ私を迫害するのですか?」とイエスの声を聞き、キリスト教に改宗します。繰り返す痛みを「片頭痛」、閃光を「前兆」とする解釈があります。パウロが片頭痛による閃光にあわなければ、キリスト教の発展はなかったかもしれません。

ギリシア神話によると、全知全能の神ゼウスも頭痛には耐えられなかったようです。あるとき思慮の神であるメティスはゼウスの子を宿してしまいます。メティスには、産んだ子供が父親を殺すであろうという預言がなされていました。そこでゼウスはメティスをまるごと飲み込んでしまいます。数年後ゼウスは激しい頭痛に襲われます。あまりの痛みに耐えかねて、鍛冶の神ヘパイストスの作った斧で、自身の頭を割ってしまいます。すると、ゼウスの頭から乙女が生まれます。それが鎧に身を包んだアテナです。アテナは知恵の女神であり、ギリシアの首都アテネの守護神でもあります。

聖パウロのイメージ


Vol.3

今年はルイス・キャロルの名作「不思議の国のアリス」が誕生して150周年となります。キャロルが同僚の教授の娘アリスにせがまれて即興で作ったお話です。

「これで大きくなれば鍵に手が届くし、小さくなっちゃったらドアの下から潜ればいいし、どっちにしても庭に行けるものね」

冒険の序盤でアリスは「私を飲んで」とラベルが貼られた薬を飲み、たったの25cmにまで縮んでしまう。そして次に口にした魔法のケーキでは、天井に頭をぶつけるほど大きくなります。

〈不思議の国のアリス症候群〉とは、知覚された外界のものの大きさや自分の体の大きさが通常とは異なって感じられることを主症状とし、様々な主観的イメージの変容を引き起こす症候群で、1955年にイギリスの精神科医トッドにより名付けられました。

この現象には様々なパターンがあり、自分が浮かんでいるような感覚やまわりのものが浮いているような感じがしたり、時間の進み方が早く感じたり遅く感じたりなどもします。

不思議の国のアリス症候群は、片頭痛の前兆として現れることが知られており、てんかんや精神疾患などでも見られます。キャロルも片頭痛持ちだったと言われており、「不思議の国」はキャロルの実体験によるものかもしれません。

不思議の国のアリスのイメージ


Vol.4

片頭痛は芸術の世界においても多大な影響を与えることがあります。

スペインが生んだ20世紀最大の画家と称されるパブロ・ピカソは、ルネサンス以降の一点透視画法を否定し、いろいろな角度から見た物の形を1枚の絵の中に描く革新的技法(キュビズム)を編み出しました。記録にはありませんが、ピカソは視覚障害を伴う特殊な片頭痛を患っていたのではないかと言う説があります。「泣く女」のような目や鼻、口が左右非対称になった女性の人物画など、ピカソ独自の作品世界は、彼自身の実際の視覚として捉えていたのではないかと云われています。

オランダの後期印象派の天才画家フィンセント・ファン・ゴッホは精神を患っていましたが、片頭痛に悩まされていたとも云われています。ゴッホの作品の中には多くの種類の星が描かれています。放射線状に光線が出ていたり(ローヌ川の星月夜)、同心円状に光の輪が描かれていたり、夜空が渦巻いていたり(星月夜)と多様に表現されています。このゴッホの描いた星は、片頭痛の前兆症状として知られる閃輝暗点(目の前で左がキラキラする、ギザギザした模様が見える)を表現したものかもしれません。

ピカソ作品のイメージ